temu38のブログ

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単行本「白貌の伝道師」 雑感

    白貌の伝道師 (星海社FICTIONS)

先日、「白貌の伝道師」(著 虚淵玄あきまん)

を読みきりました。

 

活字小説を一冊丸ごと読むこと自体十何年ぶりになるくらい

久々だったのですがなんとか無事に読み終えることができました。

(それでも何ヵ月も掛かった)

 

この本を読んでいて有難かったのが

章ごとの区切りが短かったことで

その章の中にもさらに中断があるので

ちょっと読み進めるだけで切り上げることができたのが

最後まで読み進められた大きな要因だった気がします。

(ゲームのチェックポイントみたいな感覚で読むことができました。)

 

 内容はエルフとダークエルフと人間の世界を舞台に描かれる

 混沌の信仰者ラゼィルと人間の血の混じったハーフエルフ アルシアの復讐劇です。

秩序を重んじる森のエルフと

欲深さと業を背負った存在として描かれる人間たちを

いかにしてラゼィルが混沌に陥れるのか!?

が描かれます。

 

虚淵先生と言えば何かよく知らなくても

とりあえずヤバくてグロくて面白い!というイメージがあります。

この作品においてもぶっ殺しまくりでヤバイのはヤバイのですが

それが全く嫌味に感じることなく

とても丁寧で終始落ち着きのある文章でした。

 

内容は残虐でも文体としては非常にオーソドックスなのが

とにかく読みやすかったです。

結果として面白かったかというよりは

ちゃんと文章を読んだという印象だったんですが

 久しぶりに本を読んだ身としては逆にそれがちょうど良かったみたいです。

 

本来ならばもっとエンタメ然としても全然いいと思ったのですが

作中でラゼィルが神に捧げるために混沌を作り上げるように

虚淵先生の文章にもまた供物のような意味合いが込められているのかもしれない、

みたいなことを思ったりしました。

実際、この抑揚なくただ読み進める感覚は

文章のせいなのか、作品との相性のせいなのかはわかりませんが

この理由のない淡々とした作業感、

そういうものに価値があるのではないか?

みたいなことをこの本を読んで考えたりしました。

 

最後にあきまん先生の描いた挿絵も素晴らしかったです。

エルフの森が輝いて見えます。最高です!