封神演義 雑感 その3 ~原作と二次創作編~
大河作品というものに今まであまり触れて来なかったのですが
漫画版「封神演義」にもそう言って差し支えない読み応えがありました。
大河といえば普通の歴史物語になるのが普通だと思うのですが
封神演義には人間の住む人間界と、仙人の住む仙人界が存在します。
その2つの世界をまたいで中国の殷の時代を物語るというのが
面白さの1つです。
基本的に仙人たちが人間界を良くするするために
あれこれ画策するのですが
仙人界にもいざこざがあったりして
人間界そっちのけで激しくぶつかりあったりします。
封神演義の「封神」というのも
人間界に悪成す存在を封印するという部分からくるもので
物語はその封神計画を主人公である太公望という仙人に
任されるところからスタートします。
これは歴史モノ全般に言えるのかもしれませんが
一応史実に則っているので
キャラクターの目的や意向がはっきりしていて
何をしようとしているのか理解しやすくどこか安定感があります。
単純に分かりやすいということではなく
歴史的な裏付けというのは想像以上に
作品を強固なものにしていると思います。
その上で仙人という非実在的な存在が
ファンタジーすることで
史実を読んでいるはずなのに
なぜかフィクションてんこ盛りになっているという・・・
このハイブリッド感は結構ありそうで、なかなか味わえない不思議な体験でした。
中国の歴史で仙人が出てくるSFファンタジーって
全然ピンこないし実際に当時読んだ時は全然ピンと来ていなかったんですが
いざちゃんと読んでみるとこれをヴィジュアルで成立させられる
藤崎竜先生の実力はかなりスゴイと言えます。
あまりにもぶっ飛んだデザイン!!
次に何が出てくるか想像するだけでもワクワクします。
さらに封神演義にはその仙人の象徴となる武具、
この宝貝のデザインがまたヘンテコなものばかりで面白いです。
キャラの個性を際立たせるためには
必殺技、超能力、霊能力など色々ありますが
アイテムによる差別化というのも
なんかありそうでなかなかなくて地味に新鮮でした。
他にもたくさんありますが
見事に原作封神演義をまとめあげたと言えると思います。
ただ気になるのは
原作版に対する藤崎版の封神演義の評価です。
原作とアニメでさえ驚くほどの差異や改変があるのだから
藤崎版封神演義が原作と比較して
全く受け入れられなくても不思議ではありません。
これは原作の方が良いとか悪いとかの話ではなくて
結果として原作との違いによる違和感が生まれてくるだろうということです。
そのとき藤崎版封神演義が原作版と比べて
どれくらいのズレや取りこぼしがあったとしても
それはそれとして認めた上で、
そこから藤崎版封神演義自体を評価することが
今回の自分にとっての重要なテーマになりました。
原作版にあるかどうかは不明ですが
この原作の改変、つまり歴史の改変も
藤崎版では伏線回収的な意味で最終的に取り扱われています。
拡大解釈かもしれませんが
オリジナルも二次創作もどちらの在り方も認められるような
終わり方だったと言えなくもない気がしました。
藤崎版封神演義には何と
自分だけの封神演義を編集できるゲームまで発売されています。
全てのプレイヤーの望む封神演義、
それはもはや封神演義でも何でもないものになってしまう様に思えもしますが
今回自分の経験した個人的な封神演義体験では
やはり原作とアニメ、原作と二次創作のその違いや在り方の問題が大きかったので
どういう形にせよそれらが救い上げられたことで
自分も報われた感があって良かったです。